神戸新聞 2007年5月28日(月曜日)夕刊 随想 2

あなたの関わりの深いモノはなんですか?続き

  前回も紹介しましたが、両手の上に宝物を置き写真に撮り、まつわる物語を語ってもらうという作品の名前は“私のモノ、私とモノ”といいます。
参加していただいた2500人が運び込んで下さったモノには2500の物語がありました。
 ご自分のとても大事な時代の宝物として、戦争の記憶が色濃い物をお持ちの方がいました。少年時代に焼け野原で拾ったB29のプロペラ。帯と足袋の小はぜをボタン代わりにしてお母さんが作ってくれた財布。戦場から持ち帰ったコンビーフの缶あけ金具から作った縫い針。天皇閣下から頂いた軍隊手帳。大陸で人を噛み殺す訓練をさせた犬との軍隊時代の写真。撮影をしていた私や若いスタッフは、殺すか殺されるかの切実な物語を宝物として懐かしそうに誇らしそうに語るお年寄りに、かえって戦争の恐ろしさを目の当たりにし、凍り付きました。
  2002年兵庫県立美術館での撮影では、やはり7年前の神戸淡路大震災にまつわる物を持って来られた方がいました。
  倒壊した家より出て来た母の女学生の頃の日記。全壊した暗闇の中でたまたま踏んだ拍子に放った光で救助されるきっかけになった時計。燃えた家のがれきの中から出て来た鉄の塊になった祖父のかたみのカメラ。今眺めると撮影した時の皆さんの表情とともに、12年前の震災の現実が鮮明に蘇ります。
  長い歴史の時間からながめると、モノもそして写真も手のひらを差し出した人でさえ、いつか形あるものはなくなるのでしょう。でも人々が膨大な持ち物から選び、手の平に置いた瞬間と思いや物語は、風化せず消えないのではと深く感じました。
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by yurishibata | 2007-08-01 09:49
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