神戸新聞 2007年8月14日(火曜日)夕刊 随想 7

呼吸

 わたしは私と外界との関わりに焦点をあてる事で思いを形にして表現活動しています。
 呼吸している私たちの体の中と外を行き交う空気について考えた時に、私は表現活動と平行に呼吸を重んじている武道について知りたくなりました。日本らしい合気道にひきよせられて道場に通い始めたのが4年ほど前です。いまもまだまだ初心者です。
 芸術は人間が生きて行く上での生きる術のアートという言葉を使いますが、武道もマーシャルアーツと訳する生きる術の一つです。自分1人が相手と繋がったところでもがくのではなく、相手と繋がった二つの体を一体としてどう促して行くかという、手だてとしての道があるようです。その相対した時の捌きの鍵に呼吸があります。相手の呼吸に合わせて息を吸い、捌く時に吐き、又投げられる時に吐く。私にはその動きが非常に美しく感じます。
 武道をはじめてよく似ているなと感じる事に書道がありました。人が筆を持つ時、筆と敵対などせず、絵を描く時と同じく筆の先まで意識を通わせて、息の流れに合わせて書き進みます。こどもの頃よく、書き進んで行くときにゆっくり吐きながら、とかそこで息を止めてと母にかけ声をかけてもらってお稽古をした事を思い出します。
 私は表現活動でそんな武道の考え方に学ぶところがありました。日本やアメリカでさまざまな年齢と肌の色の男女に上半身はだかにで深い呼吸をしているところの映像を撮影した作品があります。直径3m以上の球面の一部の形のスクリーンは映し出す人々の呼吸にあわせて膨らんだりしぼんだりします。この表現では今はまだ道の途中で、健康な50歳代までの人々の映像が続いています。そうでない方、例えば乳児や妊婦やお年寄りの方などのご協力を募っています。数人の方が名乗り出て下さっています。今この大地に同時に息づいている命の事を、私1人でもがくのではなく、地球単位で思いを馳せる試みはまだ続いています。
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by yurishibata | 2007-11-19 21:45
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