2007年 06月 03日 ( 1 )

神戸新聞 2007年5月11日(金曜日)夕刊 随想 1

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あなたの関わりの深いモノはなんですか?
  
 何も持たずにこの世に生を受けた私たちですが、かたづけのへたな私の家の中はつきあいきれない物であふれかえっています。しかも物にはこだわらないと言いながら物達と別れる踏ん切りがつかずにいます。
 数年前に小さな頃から順番に、覚えている限りのいろいろな出来事と出会った物達を、試しに年表に書き込んで行きましたら、つまらない物を買って来た私の歴史があからさまになりました。
 鼻が磁石になった豚のおもちゃ、ぎざぎざ切れるはさみ、気まぐれで買った調理器具。絵や写真の道具などに至っては使っていない物もおびただしく、仕事柄とは言え、どうにかならないかと考えあぐねる物達がいっぱいです。それはとても情けなく切ない私の歴史でありながら反対に物達が語る私の姿だと感じました。
 それらの物を眺めていると私がここに居る事や、私と私が作る物との関わりなどの私の世界の一つの見方があるようにおもえました。—他の人は何に心が動き何を大事にして、何と関わりを深く思っているのだろう?」
 それで1996年より始めたのが、人々の手の上にその人の関わりの深い物を置いてもらい写真を撮影する『わたしのモノ、わたしとモノ。』という作品です。
いままで約2500人の方の写真を撮影させて頂きました。    
 ほとんどの方が撮影の時にそのモノとの物語を聞かせてくれます。亡くなった方にまつわるモノを手のひらに載せて語る方の中には嗚咽で撮影に一時間以上もかかる方や、モノの話に夢中になってなかなか撮影出来ない方もいます。
 私はこの作品で様々な振り幅の違う『人とモノ』の関係を写真と物語で追体験する事になりました。
 あなたはあなたの手の上に何を置きますか?

神戸新聞 2007年5月11日(金曜日)夕刊 随想 1


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by yurishibata | 2007-06-03 18:06